静岡挽物の技

轆轤(ろくろ)を回しながら様々な刃物を使い、
木をくり抜いたり削ったりしてつくる挽物。

静岡市における産業としての挽物の起源は、1864年(元治元年)とされています。

一本の木材からあらゆる曲面を削り出す挽物の技術は、家具や楽器、
雛具などの地場産業に重宝され、その発展に貢献しながらさらに磨かれていきました。

現在は装飾や部品にとどまらず、静岡挽物として、
現代的な解釈を加えた魅力的な商品を生み出しています。

刃物を操る手を止めて、白鳥工房の挽物師である白鳥氏が、静岡挽物について語ってくれました。

一つひとつが、
この世にたった一つだけ。

静岡挽物に使用する木材は、けやき・ひのき・さくらなどの国産材です。
ひのきはやわらかく、けやきは硬いが狂いにくい。
さくらは、木目はおとなしいのに捻じれたがる。
材料と対話しながら、つくる商品によって素材を使い分けています。
また、同じ商品をつくるために同じ形を削り出しても、同じ木目はふたつと無いので見え方や印象が変わります。
木目をどう見せたいのか。そこまで考えながら、刃物を入れていくのです。

静岡挽物づくりは、
刃物づくりから始まる。

挽物の加工は主に、商品の大きさに合わせて木材を切る[木取り]、おおよその形をつくる[粗挽き]、理想の形に磨き上げる[仕上げ挽き]からなります。
木を削る刃物は大別すると6種類ほどですが、細かく見ると粗挽き・仕上げ挽きの各工程で約50種類ずつ、計100本にものぼります。
それらのほとんどは、挽物師の手づくり。
板状の鋼を、炭を焚いて熱し、叩いて、砥いで仕上げた独自の道具です。
静岡挽物の職人は、鍛冶屋としての腕も試されます。

木を切ったからには、
しっかり使い切る。

木は生きています。その命を無駄にしたくない。
だから何よりも、使いやすさにこだわっています。
自分の手の感触、肌感覚を頼りに、角材から人が使ってくれる形を削り出し、命を吹き込む。静岡挽物は暮らしの中で使われて、初めて活きる普段使いの日用品です。
木製品は、金属のように冷たくも、熱くもなりません。ぜひ一度、手に取ってみてください。
やわらかな曲面が、しっくりと手に馴染む感覚を味わってください。